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- 射出成形を始めとしたプラスチック成形では、可燃性の高い原料を高温・高圧で加工するため火災の大きなリスクがあります。一度火災が発生したときは拡大し易く、また消火活動が困難となるため被害が大きくなります。
火災による影響
プラスチック成形に用いられる原料は、指定可燃物のうち合成樹脂類に分類されます。
指定可燃物とは、火災が発生した場合には拡大が速やかにであり、又は消火の活動が著しく困難となるものとして政令で定めたものです。
このため、一度火災が発生し原料等に引火すると火の回りが早く、初期消火が困難となります。また、プラスチック原料の火災では黒煙が多量に発生することで、工場等の全焼だけでなく逃げ遅れによる人的な大きな被害も発生する恐れがあります。
火災原因と対策
・加熱筒における高温
プラスチック原料を加熱融解させる加熱筒では、不適切な温度設定(高すぎる温度設定)により気化や発火の恐れがあります。特に原料変更時(高温原料への変更時)では、加熱筒内部に残る前原料が溶解温度を超えて加熱されることがあります。
対策:
・温度設定が大きく異なる複数の樹脂を用いる工場では、樹脂種類毎の許容温度を周知する。
・原料の置換手順を定める。特に樹脂許容温度が重ならないとき、樹脂許容範囲が重なる樹脂による置換工程を設ける。
・加熱筒ノズルからの樹脂漏れ
ノズル先端と金型タッチ面からの樹脂漏れは、ノズルに纏わりつきヒーターバンド等の配線をショートさせて発火する恐れがあります。対策:
・ノズル先端部の樹脂漏れを毎日(日常点検項目として)行う。
・漏れ出た樹脂は量が少ない内(ヒーターバンド等に付着する前)に除去する。
・粉塵
粉砕機により発生する微小のプラスチック片は粉塵として周囲に堆積します。粉塵となったプラスチック片は特に可燃性が高く、静電気やコンセント等のスパークにより引火する。対策:
・床や吸気や排気により粉塵が溜まりやすい箇所は、掃除機・集塵機などで定期的清掃する。
・ガストーチの使用
スプールや製品残り。ノズルなどに付着した樹脂の除去でガストーチを使用して針金やボルトを熱して除去します。ガストーチから吹き出す火が周囲に引火する。または、樹脂に直接ガストーチの火で炙るなどして引火する。
対策:
・ガストーチを使用する際、周囲の状況(広さや引火物の有無など)を確認するなど手順を定める。
・樹脂に直接炎であぶることを禁止する。または、屋外等で防火が確立された場所に使用を限定する。
・コンセントプラグのトラッキング
コンセントとプラグの間に埃や粉塵が蓄積すると、短絡(通電)により発火する。対策:
・コンセントタップを使用する時、床置きを禁止(湿気、粉塵等の堆積予防)し側面等に張り付けて使用する。
・コンセントプラグのタイトラキャップや安全プラグカバーを使用する。
・ほこり防止シャッターがついた火災予防タップや、使用しないコンセント口に安全キャップを使用する。
・掃除機・集塵機でコンセント口を掃除する。
・原料輸送ローダー等のブロウ排気を壁のコンセントやコンセントタップに向けた配置としない。
・配線コードからの発火
配線コードが過電流や折れ曲がった状態、細くなった状態で使用すると発火する。対策:
・大きな電流を使用する機器の接続では、コンセント側にもブレーカーを用いる。
・コンセントタップでは、複数機器の接続で過電流とならないようブレーカー付きのタップを使用する。
・配線コードを束ねた状態で使用しない。
・配線コードを周辺機器などで潰さない。
・制御盤
経年より制御盤内のに埃が蓄積することで、短絡(通電)により発火する。対策:
・吸入口を掃除機等で定期的に掃除する。
・吸入口にフィルターがある場合、脆くなるなど劣化の兆候があるときには交換を行う。
・制御盤が入った扉や蓋をあけた時、焦げ臭いなどの異常を感じた時は詳細な点検を行う。
・静電気
成形機周辺では、原料の帯びる静電気。原料の輸送や成形工程により発生する静電気により、金属の接触があると放電によるスパークが発生します。スパークが発生する周辺に可燃性の特に高い(ガスや粉塵)ものがあると引火します。
対策:
・周辺機器や金属製の原料タンクなどにアースを設置する。
・帯電防止の作業服を使用する。
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・加熱筒ノズルからの樹脂漏れ
ノズルは金型タッチ面だけでなく、ヘッド部の緩み。チェック部の摩耗による隙間からも樹脂漏れが発生します。
金型タッチ面の位置調整、ヘッドの増し閉め、パーツ交換などのメンテナンスを行います。 -
・油圧ホースからの作動油の飛散
霧状に噴出した作動油は引火性が高く、周囲でガストーチを使用することで引火する恐れがあります。
ガストーチ使用時は油圧動作を行わないなど、引火性の高い作動油が用いられていることに注意します。 -
・機械グリスの堆積
給脂されたグリースや零れた樹脂は可燃性が高いため、堆積したものは定期的に除去します。 -
・吸入口のフィルター
成形機や周辺機器の吸入口は、粉塵などで目詰まります。汚れは空気の流動が悪くなるだけでなく、徐々に内部の制御盤に付着しトラブルや通電火災の原因となるため清掃を行います。 -
・制御盤の汚れ
制御盤やスイッチ、端子の接続部に付着した埃による短絡(通電)により発火することがあります。目に見える大きな付着物。焦げ臭いなどの異常がある時は清掃や点検を行います。
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