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射出成形オペレーターの知識蔵金型グリスの悩み>金型グリスの種類
 金型に使用されるグリスは、金型の可動動作の違い。金型の温度。保護する箇所にかかる荷重の大きさ。可動部の動作速度により、適したグリスの種類が異なります。グリスの選択を誤ると、グリスを使用しても金属摩耗の発生や、グリス垂れてメンテナンス頻度が多く必要となる。金型動作を阻害する等の影響が発生します。

金型グリスの種類

・フッ素グリースグリス
 金型のスライド部、割型及び割型の傾斜ピン、突き出しピンに使用される耐摩耗性のグリス。耐熱温度が-20~250℃。※

・ウレアグリース
 耐熱、耐水、潤滑、酸化安定に優れ各種ピンやガイド軸、高荷重のベアリングにも使用できるグリス。耐熱温度が-30~200℃。※

・リチウムグリース(万能グリス:マルチパーパスグリース)
 安定、耐熱、潤滑に優れたグリス。ガイド軸からベアリング等幅広く使用できるグリス。耐熱温度が-25~200℃。※

・モリブデングリース(モリブデン入りリチウムグリース)
 リチウムグリスにモリブデンを加えることで極圧性を高め、高荷重にも使用できるグリス。耐熱温度が-15~150℃。※

※グリスの性能や耐熱温度は主成分の他、配合された添加剤により大きく異なります。 使用するグリスの耐熱温度(上限)は、実際の金型温度に摩擦による発熱を考慮した余裕を持った温度が必要です。
 また、チラーの故障や冷却水詰まりなどのトラブルによる温度上昇による被害(熱膨張による齧りの発生)を軽減するためには、通常不要でも高い耐熱温度があることが理想的となります。


グリスの種類以外の考慮事項

 金型に使用するグリスでは、単に主成分の違いだけでなく付着性やメンテナンス。構造上製品への付着等様々なことを考慮して選択されます。

グリス粘り(ちょう度)
 同じ系統のグリスでも粘りによる違い(ちょう度の数字の大小)により、半固体状態での付着性と柔らかさ(抵抗)に違いがあります。
 ちょう度の数字が小さいと柔らかく、大きいと硬くなり、使用される増ちょう剤の量で調整されています。
 高温によりグリスが熱による影響で緩くなる箇所では硬めのグリス。低温によりグリスが広がり難い箇所では柔らかめのグリスを使用します。
 グリス性能に問題なくても垂れるなど付着性に問題がある場合もちょう度変更します。ちょう度変更では、同じグリスであるため異種グリスの混合による懸念がなく使用することが出来ます。

メンテナンス周期
 金型の構造により表面に露出した箇所のメンテンナンスは容易ですが、複雑なパーツで組み合わされた内部のメンテンナンスは頻繁に実施することが出来ません。
 また、連続成形を一度停止するだけで多量の不良が発生するため、メンテナンスに停止することが出来ない成形もあります。
 実際に行えるメンテナンスの周期を考えた性能(耐久性・寿命)が必要となります。

製品への付着影響
 グリスを使用する箇所のうち、製品部に近い箇所にスライド部等の可動部があるものでは、構造上スライド部からの油分付着を完全に防止することは出来ません。
  グリス付着を少なくするため、グリスの流動性の違いによるグリス漏れの違い。付着した場合の影響が小さいもの等を考慮します。

グリスの種類

  • フッ素グリス
  • ・フッ素グリス

     流動性が低いですが比較的寿命が長く耐摩耗性の高いフッ素グリスです。金型のスライド部などメンテナンスを頻繁に出来ない箇所や、連続成形を停止できないガイド軸等に使用します。

  • リチウムグリス
  • ・リチウムグリス(マルチパーパス)

     万能グリスことリチウムグリスです。日々メンテナンスを行える箇所多くに使用されるグリスです。使用温度範囲内であれば、高荷重箇所以外の殆どの箇所で使用することができます。


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