射出成形オペレーターの知識蔵

射出成形オペレーターの知識蔵金型取付ボルト・ネジ穴の悩み>金型取付ボルトの締め付けトルク
 ボルトの締め付けは、ボルトサイズ(径)とピッチに合わせて締め付けを行うことが基本です。しかし、射出成形機の金型取付けでは一般使用と異なり、強いトルク(ハイトルク)による締め付けが必要となります。成形機の取扱説明書や使用するボルトの標準トルク値を参考に用途応じて締付トルクを定めます。
射出成型機の代表的なボルトサイズと締め付けトルク
 M12 42N・m(428kgf・cm)、M16 106N・m(1080kgf・cm)、M20 204N・m(2080kgf・cm)、M24 360N・m(3670kgf・cm)
 ハイトルクでの締め付けでは、ネジ穴(雌ネジ)とボルトの両方がハイトルクに対応した強度であることが必要です。
 ボルトの強度が不足すると、ボルトの破断。ネジ山の潰れが発生します。
 また、ボルトの強度がネジ穴(雌ネジ)側より高いと、ボルトのネジ山の不備や過トルクなどあると、ネジ穴(雌ネジ)側のネジ山が潰れが発生します。
 用いるボルトは、サイズやピッチだけでなく強度を示す刻印が要件を満たす(成形購入時に付属していたボルトと同等)ものが必要です。詳細、次ページ「ボルト強度とねじ込み深さ」参照

適正なトルクでの締め付け方法
 確実なトルク値を得るためには、トルクレンチを使用します。
 トルクレンチには予め定まった値で使用できる型。ダイヤルでトルクを調整出来るプリセット型。トルクが固定された非調整トルクレンチがあります。
 トルクレンチを使用しない場合、加える力と用いる工具の持ち手までの長さにより計算することが出来ます。
例:M16 106N・m(1080kgf・cm)
 F(加える力)×L(ボルトから工具の持ち手までの長さ)=106N・m(1080kgf・cm)
 使用する工具40cm(ボルトの中心から持ち手中心までの長さ30)の時、F(加える力)は353N(36kgf)となります。工具を水平となる角度にし、持ち手の箇所に36㎏の重りをそっと載せた時に加わる力です。工具の長さ2倍になれば、加える力は半分。3倍なら3分の1になります。
 ・106N・m  = 353N × 30cm
 ・1080kgf・cm= 36kg × 30cm

適正トルクによる締め付けの重要性
 ボルトは、締め付けることで伸び発生し、ボルトが元に戻ろうとする力で緩まなくなります。ボルトが伸びても元に戻る範囲を弾性域。弾性域を超えて元に戻らない範囲を塑性域(そせいいき)。更に締め付けるとボルトは破断します。
・締め過ぎ(過トルク)
 弾性域を超えた力で絞め込んだ状態です。一見して問題なくても、ボルトが伸びて外してもボルトは元に戻らなくなっているため再使用することが出来ません。
 また、ボルト側の強度がネジ穴側と同じ。又は上回っているとネジ穴のネジ山に損傷を与えています。
・トルク不足
 ボルトの伸びが発生していため、収縮による継続的な力が加わっておらず、振動等により緩みやすい状態にあります。

ボルトの締め付け
 金型取付ボルトを締め付けると、金型に締め付ける力による歪みや、ボルト等の接触箇所に削れや、凹み等が発生します。
 歪みや削れ。凹み等座金やクランプなどを使用します。

ボルト締め付けによるゆがみ対策
 繊細な金型では、締め付けによる歪みにより動作や成形品の品汁に影響を与える場合もあります。歪みによる影響を最小とする為には、金型設計段階で歪みが考慮された取付位置を用いる。ボルトの締め付けでは、毎回トルクレンチを使用して金型設計時のトルクにて締め付けることが重要です。

金型取付ボルトの締め付けトルク

  • 成形機の金型締め付けトルク表
  • ・成形機のトルク表

     成形機に付属していたトルク表です。
     成形機メーカーや機種によりトルク値が異なるため、使用するボルトの強度等を含め総合的に締め付けトルクを定めます。

  • 非調整トルクレンチ(ハイトルクレンチ)
  • ・非調整トルクレンチ

     金型取付用の薄型のハイトルクレンチです。設定されたトルクをラチェット式でスピーディーに締め付けることが出来ます。
  • プリセット型トルクレンチ
  • ・プリセット型トルクレンチ

     ダイヤルによりトルクを調整出来るトルクレンチです。ダイヤルを設定することで求めるトルクで締め付けることが出来ます。
  • トルクの計算
  • ・トルクの計算

     取付けボルトと使用する工具。持ち手の位置関係です。
     写真ではボルトの中心から持ち手の中心までの距離が20cmとなっています。
     M12ボルト42N・m(428kgf・cm)では、  428kgf・cm=21.4kgf×20cm
     加える力は21.4kgfとなります。
     体重を乗せない手締めでは、片手でおよそ15kgf,両手で絞めて30kgf程の力が加わります。

 次ページ:ボルト強度とねじ込み深さ

金型取付ボルト・ネジ穴の悩みカテゴリ

ブログ

ページのトップへ戻る