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射出成形オペレーターの知識蔵冷却水の悩み成形工場の冷却システム>冷却塔の仕組みと水質問題
 冷却塔(クーリングタワー)の使用を続けると、同じ水が繰り返し循環することで雑菌の繁殖。外気から埃や虫の混入。冷却水が気化することでミネラル分が濃縮しスケールが発生するなど、水質悪化により設備の故障など様々な影響が発生します。このため、清掃を始めとした適切な維持管理が必要となります。

冷却塔を用いた冷却水の循環システム

 冷却水は、機械設備等と熱交換を行うことで高温となり、高温となった冷却水は、熱交換効率が低下するためそのまま再使用することが出来ません。
 冷却水を使い捨てる行為は、環境負荷やコストの観点から問題が大きいため、多く工場で冷却塔(クーリングタワー)を使用した冷却水の循環システムが構築されています。

冷却塔(クーリングタワー)の概要(開放式)
 クーリングタワーは高温となった冷却水を内部の熱交換器に散水し、ブロア(送風機)により外気を多量に充てることでおきる気化現象によって熱を奪い冷却(気化熱)しています。
 これに対して密閉式の冷却塔では、高温の冷却水を配管に通して、配管の外側に散水を行うことで間接的に冷却水を冷却するため、冷却水が外気に直接暴露されない構造となっています。

冷却塔利用によるスケール化

 冷却水は冷却塔で気化することで水に溶け込むミネラル分が濃縮されます。
 濃縮され高濃度となったミネラル分は、何れ飽和して固形物として堆積します。しかし、多くの場合で高温となる配管部や接地している金属部でスケール(水垢)として付着・堆積し詰まり等の障害を引き起こします。

冷却水スケールの主な成分
 冷却水から発生するスケールは、使用した水に含まれるカルシウムやマグネシウムといったミネラル分です。ミネラル分は電解質として水に溶み存在していますが、濃度が濃くなることでスケール化し易くなります。
 白く付着したスケールの多くは、主成分を炭酸カルシウムや炭酸イオンを含む化合物です。

冷却水スケールの付着
 高濃度となったミネラル分は、通常環境下では濃度が飽和することで発生し堆積します。
 しかし、冷却塔を用いる冷却システムでは、多くの場合で飽和する前に機械設備の高温となる箇所。金属部位の接地箇所(アース等を電気が流れる)でスケールとして付着するため、これが配管が詰まりの原因となり、設備に深刻な影響を与えます。
 機械設備など70度を越える配管部位では、炭酸塩として付着。金属部位の接地箇所(アース等を電気が流れる)では、電解質イオンを得る(放出する)ことで炭酸カルシウム(又は、炭酸水素カルシウム)として付着します。

冷却塔利用によるスライム障害

 冷却水は、一年を通して適度な温度があるため、細菌やバクテリア。藻等が繁殖し不衛生となります。細菌などにより発生することで起きる滑り(スライム)により、配管詰まり等の障害が引き起こされます。
 また、不衛生は水質は悪臭を引き起こします。

冷却塔使用による腐食障害

 冷却水は冷却塔で気化すること溶存酸素濃度が高まり、鉄や銅・ステンレス等の配管等の金属部分の溶出による腐食が引き起こされます。
 また、冷却水に使用している水道水等はほぼ中性(pH7.0前後)ですが、循環を繰り返すことで強アルカリ性(pH数値が大きく)へとに傾きます。

水質問題の主な対策

冷却水の強制補水による希釈

 冷却水が高濃度をならないよう、気化減少分以上に補水を行いオーバーフロー排水させることで濃度を低く維持します。
 吸水装置のフロートを調整することで、常に補水を行う状態にすることが出来ます。
 しかし、オーバーフロー排水を行うということは、それだけ水の使用量が多くなるため、地下水や安価な工業用水等を使用できない環境ではコストが大きく増えます。

冷却水の入れ替え

 冷却塔の定期清掃時などに冷却水を総入れ替えを行うことで、定期的に低濃度となるようにします。
 清掃の際、既に発生したスケールやスライム等を除去して実施するとより効果的です。しかし、清掃時には設備を停止する必要があります。

スケール除去装置の導入

 冷却水内の電解質であるミネラル分に電気を通すことで結晶化して除去します。結晶化して除去することで冷却水のミネラル濃度を低下させることができます。
 スケール除去装置によって溜まったスケールを定期的に除去することが必要となります。

冷却塔の構造と清掃方法

  • 冷却塔の構造
  • ・冷却塔の構造

     冷却塔は高温の冷却水を上から充填材に散水し、ブロアにより外気を大量に充てることで気化熱により冷却。
     冷却された冷却水は下の水槽から循環システムへ戻ります。

  • ・充填剤の清掃

     充填剤には気化により結晶化したスケールが多量に付着しています。スケールが堆積することにより冷却効率が低下するため、スケールを除去します。
     スケールは白い石のように付着しているため、高圧洗浄機により吹き飛ばす方法が効果的です。
  • ・水槽内部の清掃

     水槽内部は藻や細菌等によりスライム化(ヌメリが発生)しています。
     スライムと体積した土埃(ヘドロ)を等を除去し、冷却水出口等が塞がれることがないよう清掃します。
  • ・清掃時の点検箇所

     充填材の破損や散水機の目詰まり。フロート及びフロートに接続された吸水装置。オーバーフロー排水口等が問題なく機能することを確認します。
  • ・クーリングタワーの清掃頻度

     空調用のクーリングタワーでは、建築物衛生法により1年以内に1回。
     工場のクーリングタワーでは、建築物衛生法が適用されません。しかし、機能維持のため通常半年から年1回程度。
清掃上の注意
 清掃作業では、事故や機器設備に影響がないよう全て停止させて作業を行います。
 清掃直後、体積したゴミが舞い上がる。除去したスケールが流入することでトラブルとなることがあります。予め冷却水出口を塞いで清掃作業を行う。清掃後の濯ぎを十分に行い剥離したスケールを可能な限り除去することでトラブルを未然に防止することが出来ます。
 清掃後は冷却水が大量に入れ替わることで水質が一時的に変化します。水質の変化はスケールの原因となる電解質濃度が低下し、pHがアルカリ性から中性に変化するなど、水質の観点から良い方向に変化します。しかし、高濃度から低濃度に一度に低下することで配管部分のスケールの溶解や溶解に伴う剥離などが発生し、スケールの塊による詰まりを引き起こす。pHが中性に近づくことで藻が発生する等の問題が発生することがあります。
 これを防止するためは、清掃は定期的に行い極端に長期間(数年に渡り)放置しないことが重要です。

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