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射出成形オペレーターの知識蔵プラスチック成形の安全衛生>取り出し機(取出機)での事故
 成形機に付けられた取り出し機(取出機)は、動作範囲が露出しているため、接触や巻き込まれなどによる受傷事故が非常に多い機械です。事故を防止するため取り出し機が動作する危険範囲の保護、動作速度や各種安全装置の活用が事故防止に重要となります。
事故要因
・高速動作
 取り出し機は成形機の動作速度(サイクルタイム)や周辺機器(コンベア、ストッカー等)の間に合わせる、生産品目によって高速で動作します。
 高速動作は力が大きいだけでなく、安易な行動による受傷事故の誘発。僅かに触れただけでの裂傷や打撲などの大きな事故へと繋がります。
 事故を防止するため、不必要な高速動作はせずに成形機等のサイクルタイムに支障のない範囲の動作速度に設定します。

・連続動作
 取り出し機及び成形機は、全自動による連続運転が基本となっています。このため、機械的な異常(成形機の停止、取出機のモーター過負荷やセンサー)がないと連続動作が続きます。
 事故防止では、別に動作範囲内への人の立入。動作範囲に手を入れるなど危険行為を感知するセンサーを設置し動作を停止する処置が有効です。

・ニッパー
 大きなランナー等を切断するニッパー(待機ニッパー、スライドエアーニッパー)は、挟まれると切断に至る大きな危険箇所です。しかし、一見するとニッパーの位置は固定されていることから、その危険が軽視されることがあります。
 ニッパーの取付位置を手の届かない位置にする。手を差し込む恐れのある方向(下部や側面)に保護カバーを設置する方法が有効です。

・重量、モーター負荷
 取り出し機が大きいほどアーム部分や付属する部材が大きくなり重量が増します。また、それを動作させるモーターも大きくなることで、安全装置となるモーター過負荷等の感知が鈍く(実際の負荷が大きく)なり、挟まれなどの事故の際に大きな怪我となります。
 大きな取り出し機では、動作範囲が広いだけでなく、比例して力も大きく加わることを考慮した安全対策が必要となります。

・その他
 取り出し機(取出機)は、その目的から成形機の上に設置され、基本的に高い位置にあります。しかし、成形機が小型になると、取り出し機も低い位置に設置されます。
 取出機が高い位置に設置されるのはスペース効率が良いだけでなく、安全面にとっても重要です。
 本体や走行レーン等に手が届く低い位置に取り付けれた場合、ユニット本体やレーンやベルトも大きな危険個所となり、動作範囲への立入をより厳格に制限することが必要となります。

取り出し機(取出機)での事故

  • 取出機走行部
  • ・取出機走行部
     取出機はガイドレーンのある走行部、前後部、上下部の動作範囲に加え、旋回と反転よる大きな稼働範囲があります。
     作業員等の移動では、床に線を引くなどしてこれら稼働する危険範囲と作業員等の距離を明確に区分けしておくことが有効です。
  • ニッパー
  • ・ニッパー
     ランナー等を切断するニッパーは、機械トラブルや成形品の調整等において手の届く範囲に設置されていることがあります。
     安易に触れることがないよう、保護カバーの設置や調整時に停止して行う作業手順の定めが有効です。
  • 稼働レーン、ベルト
  • ・稼働レーン、ベルト
     メイン・サブアームの稼働ベルトとレーン。
     サーボモーターを使用してい動くアームは、ベルトを引くことで高速で大きな力が加わり、挟まれる。接触するだけでも大きな怪我となります。 
事故防止の基本
 取り出し機(取出機)による受傷事故の多くは、不具合等の調整において自動運転動作のまま作業を行うことで発生するものです。
 ランナー詰まりなど軽度な不具合であっても調整・処理において自動運転を停止して対応を行う作業手順を定め、これを徹底することで殆どの事故を防止することができます。

・予見できる危険動作を制限する
 動作速度、待ちタイマー設定を活用し、支障がない範囲で動作速度は遅く。各動作毎にタイマー設定を行い間をとる。

・危険区域の行動を制限する
 取り出し機(取出機)の動作範囲と安全に通れる通路等を床にラインや色分けを行うなど識別し、明確にする。
 特に危険となる箇所(作業員の高さまで下降する等)は、保護パネル等による物理的に区分け。センサーによる異常検出を行う。

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