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- 製品等に付着する異物は、成形する上で発生が止むを得ない異物と、成形工程に直接の関係がないものの、生産環境の問題で発生や付着するものに大別されます。付着異物の対策では、発生が止むを得ない物には付着の予防措置を。生産環境の問題によるものは、環境のコントロールを包括して行わなければなりません。
付着異物の種類と発生源
成形工程に伴い発生するもの
樹脂カス
・ゲートカス
製品部とランナーを繋ぐゲートは、金型の構造によっては成形に伴い樹脂カスが発生するものがあります。
金型の構造により発生する樹脂カスは、発生箇所が製品に非常に近いため、付着予防や除去が必要となります。
・バリカス
金型のパーティング(割型やその他の擦り合わせ部)により発生したバリが千切れることで樹脂カスが発生します。擦り合わせの調整や射出条件の最適化によりバリの発生を減らし、樹脂カスの発生を減らすことが出来ます。
樹脂カスについて詳しくは、次ページ「金型の樹脂カスの発生源と原因」へ
樹脂ガスによる油
樹脂を高温として成形する射出成型では、樹脂を加熱溶融することで樹脂ガスが発生します。発生した樹脂ガスは堆積することで、油として付着します。
定期的に金型を清掃することで製品への付着を予防することが出来ます。
金型潤滑油
金型のガイド軸やエジェクト。割型などの可動部には金属齧りを防ぐためグリースが湿布されています。グリースが多すぎると、金型動作に伴う飛び散り。製品部等へのはみ出しにより製品に付着します。
グリースは、常に適量を維持することで付着を予防することが出来ます。適量の維持には定期的にグリスのふき取りと塗り直し等のメンテナンスが重要です。
金型潤滑油の油かす
古く劣化したグリースの一部は、変質(硬質化)して油かすとして付着します。グリースは、変質する前にふき取り、塗り直すなどのメンテナンスを行うことで油かすの発生を予防することが出来ます。
金属片
・金型金属片
金型の潤滑油(グリース)の不足や擦り合わせが悪いと、金型の表面のメッキ剥がれや金属片が発生し付着します。
・周辺機器の金属片
取出機のスライド部、コンベアの可動部など、動作する箇所の擦り合わせや接触部に不具合があると金属片が発生し、製品に付着します。
生産環境の問題により発生するもの
毛髪
オペレーターや加工、検査等の作業員がかかわる製品では、作業員による工程が多いほど毛髪の付着リスクが大きくなります。毛髪を生産現場に持ち込まない、落とさない等の様々な毛髪付着対策が必要です。
血液
オペレーター等の作業員の怪我から製品に付着します。作業中(金型に触れて切る)気付かずに血液が付着することがあります。
指先等の怪我があった時、影響(血液付着の可能性)の範囲を特定するなど対応手順が必要となります。
虫
工場内(生産現場)に侵入した虫が製品に付着します。飛行する小さな虫は、広い工場内に何処からともなく侵入しています。虫の侵入防止や、捕虫などの防虫対策が重要となります。
塵(チリ)
工場内の樹脂ガス等の塵が堆積し、舞い上がることで製品に付着します。塵が堆積しない日々の清掃と、空調設備等により塵が舞い上がらない環境にしておくことが重要です。
樹脂カス(粉砕カス)
スプルや不良品を再利用するための粉砕機は、破砕する際に周囲に樹脂破片や樹脂カスが発生し飛散します。生産した製品は、粉砕機の飛散範囲から離す。粉砕機と製品通過部を仕切る等の環境を整えることが重要です。
代表的な異物発生源
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・樹脂カス
成形に伴い発生するランナー。製品部へとつながるゲート(ランナーの先端部)が製品と切れる際や、擦り合わせ部のバリ等から樹脂カスが発生します。
金型の構造によりカスの発生がないものもありますが、多量の樹脂カスによる異物付着が大きな問題となることがあります。 -
・金型潤滑油の油かす
金型の板が動作するガイド軸です。ガイド軸の他、稼働する箇所全てに金属齧りの防止に潤滑油(グリース)が塗られています。
潤滑油(グリース)は動作に伴い劣化し、変質(硬質化)するため、潤滑油が使用された箇所は適切な管理が必要です。 -
・周辺機器の金属片
取出機や製品コンベアなどの機械設備は、使用に伴い可動部等から異物が発生します。
特に可動部では、ベルトの擦れや金属齧りによる摩耗粉と金属片の発生が懸念されます。 -
・粉砕機からの樹脂カス
スプルや不良製品を再利用するための粉砕の際、樹脂破片や樹脂カスが発生し、飛散することがあります。
飛散を防止する措置等を行います。
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