- 射出成形オペレーターの知識蔵>金型取付ボルト・ネジ穴の悩み>成形機のネジ穴、ボルト損傷の原因
- 成形機の盤板はネジ穴を含め丈夫に設計されています。しかし、ネジ穴の損傷は後を絶たず大きな問題となっています。ネジ穴の損傷は、単に繰り返し同じ穴を使用する。という単純なものではなく、成形機特有の事情・作業者の技術不足・日頃の管理に原因があります。
しかし、成形機では取り扱う金型重量物であること。ボルトの取付・取外しが必ずしも理想的に行えないこと。ネジ穴の曝される環境が悪いことにより、損傷が蓄積されます。成形機特有の問題
・特定のネジ穴に関すること
取付ける金型により使用するネジ穴が定まっているため、毎回同じ穴を使用することで劣化が早まります。
・ネジ穴の錆び・腐食・潤滑不足に関すること
・樹脂ガスに曝されることによる錆の発生
・水漏れした金型冷却水付着による錆の発生
・低温に冷却された金型による盤板の結露
・使用頻度に少ないネジ穴の油分不足、鉄粉等の異物付着によるかじり
・ボルトの取付・取外しに関すること
金型取付ボルトは、金型の歪みやボルト・ネジ穴の負荷から、型締め圧が加わった状態で行うことが基本です。しかし、様々な理由から型締め圧力を加えず作業を行うことがあり、これら作業時の状態確認や技術力が低いと、ねじ山を大きく損傷します。
・金型重量が加わった状態での取付、取外し
・金型片側方(固定側・移動側)のみの取付、取外し
・金型を吊るクレーンのテンション不足、過度のでの取付、取外し
・型締め圧が不足し、ロケートリングで支えた状態での取付
・金型が傾いた状態(操作側、反操作側に対する水平方向)での取付
・重量バランスが非常に悪く、クレーンのテンションを貼っても大きく傾こうとする力が働く金型の取付、取外し
対策と予防
・特定のネジ穴に関すること
・金型取付のネジ穴を増やす
・金型取付のネジ穴だけでなく、クランプを使用して異なるネジ穴を使用する
・ネジ穴及びボルトの異常を使用の都度確認し、着座するまで手回し。十分なねじ深さを行うなど、ボルト取付に関する基本を励行する。
・ネジ穴の錆び・腐食・潤滑不足に関すること
・樹脂ガスに曝されることによる錆の発生
取付、取外しの都度、金型の接地面と成形機の盤板をシンナーで拭き清掃を行う
・水漏れした金型冷却水付着による錆の発生
水は錆びによる腐食の最大の原因となります。発見したら直にエアーで水分を飛ばし良く乾かす。水置換型の防錆剤を使用して錆を防止します。
・低温に冷却された金型による盤板の結露
室温を下げ除湿を行い、結露が発生しない環境に整える。金型の冷却回路の見直しを行う。
・使用頻度に少ないネジ穴の油分不足、鉄粉等の異物付着によるかじり
使用前にエアーによる清掃。油分が全くない場合には潤滑油を少量(最低限の範囲で)使用する。
※錆を放置すると、表面だけでなく内部に錆が侵攻しねじ山が痩せる原因となります。錆びの除去と防錆処置は早い方が良いです。
・ボルトの取付・取外しに関すること
・金型重量が加わった状態での取付、取外し
クレーンによる適切な吊り上げ(テンションを張る)を行う。
・金型片側方(固定側・移動側)のみの取付、取外し
型締め(型圧を加えた)して行う。
・金型を吊るクレーンのテンション不足、過度のでの取付、取外し
クレーンのテンション具合を調整する。
・型締め圧が不足し、ロケートリングで支えた状態での取付
型締めを加える。交換(低圧)モードで金型重量に負けて型締めが不十分な時、手動(高圧)モードで型締めを再度行う。
・金型が傾いた状態(操作側、反操作側に対する水平方向)での取付
水平器を使用し、金型が水平(成形機水平)となるようクレーンを調整する。
・重量バランスが非常に悪く、クレーンのテンションを貼っても大きく傾こうとする力が働く金型の取付、取外し
重心となるように金型の吊り上げ位置を変更する。
重心1か所で吊り上げらない時、2点で吊りで重心を取る。
2点吊りでも重心とならない時、1点にハンドウインチを挟み※傾きを調整する。
※ハンドウインチによるその都度調整する方法は、取付時には調整し易いですが、取外しでの調整が難しくいです。
ボルトの強度刻印・ねじ山の破損と変形
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・痩せて損傷したねじ山のネジ穴
損傷によりねじ山痩せたネジ穴です。手前側のねじ山自体小さく痩せたことから、修復が出来なくなっています。ボルトの取付けでは、ねじ山がある深い位置まで深く入れる必要があります。
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・正常なねじ山のネジ穴
ねじ山が立ち、損傷のないねじ山のネジ穴です。ネジ穴全面にボルトがねじ山がかみこみ、ねじ込み深さは最小(ボルトサイズ毎の有効ねじ深さ)で取付が出来ます。
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