射出成形オペレーターの知識蔵

射出成形オペレーターの知識蔵付着異物の種類と発生源>金型の樹脂カス発生対策
 金型内の樹脂カス対策では、金型改造や修理から始まり日々のメンテナンス。成形条件の圧力や冷却タイマーの変更。金型冷却回路の見直しや冷却設備や冷媒の温度などを調整することで発生を少なくすることが出来ます。

ゲートカス発生の主な対策

射出条件の変更
 樹脂が製品に充填され金型内に樹脂の流れが滞留すると、ゲート部の冷えて固まります。この時の射出圧力の大きさにより、ゲート部の太さが変わります。
 ゲート部が金型を圧迫は小さい方がゲートは切れやす傾向にあります。
具体例:
・1次圧は樹脂が充填されるまで。(タイマー設定ならストローク切替の検討をする)
・2次圧は樹脂戻りが発生しない程度になるべく低くする。(低すぎるとヒケの原因となる)
・3次圧の設定も検討する(2次圧を低くしてヒケが出る場合、3次圧を高くしてヒケを防ぐ)

金型温度の変更
 樹脂温度が高いとゲートの切れは滑らかに切れますが、樹脂温度が低いとゲートの切れ時の破断によりカスが発生し易くなります。
具体例:
・冷却時間を短くする。(製品全体への影響が起こりえます。)
・金型温度を高くする。(金型の内、ランナー側の一部を高くするなどの方法があります。)
・中間タイマーを長くする。(製品全体への影響が起こりえます。)

金型の構造変更
 ゲートカスは金型の構造により成形条件等で解決できないことがあります。解決しない時は、金型の構造変更についても検討が必要です。
 金型の構造変更は、射出条件等の見直しや製品の再評価等が必要となり非常に大掛りとなります。
具体例:
・ゲートのトンネル形状の変更する。(ランナー、ゲートを円錐にする。)
・ゲート口のサイズ変更する。(ゲート口を大きく又は小さくする。)
・ゲートの形状を変更する。(ダイレクトゲート、サイドゲート、ジャンプゲート、トンネルゲート等への変更する。)


パーティングライン(PL)のバリカス発生の主な対策

射出条件の変更
・1次射出をタイマー設定から位置切替に変更する。
 樹脂の充填完了後に必要以上の圧力がかからないよう、充填完了後に2次圧(保圧)に切り替わるように設定します。
・タイマー設定の射出圧力を下げる。
 樹脂の充填完了後に過圧によりPL面にバリとでないよう、PL面から樹脂がはみ出ない程度まで圧力を下げます。
・樹脂温度を下げる、射出速度を下げる。
 射出により入った樹脂は、金型に触れる周囲部分から固まり、中心を通り細部にまで充填されます。樹脂温度を下げる。射出速度を下げる条件は、PL面を含む金型接触面の樹脂の冷却による硬化が早くなるため、隙間に樹脂が入り込み難くなることでバリが抑制されます。
 なお、成形当初バリが解決しても連続成形で再発する場合には金型冷却能力の不足が疑われます。
・型締め圧力を高くする。
 型締め圧力を高くすることで、無理矢理金型の擦り合わせ部の密着を高めます。

金型冷却能力の変更
 金型が連続成形により温度が高くなると、熱膨張により擦り合わせが変化します。また、樹脂の冷却にも大きく影響します。
・冷却水の流量を増やす。
 金型の冷却水流量を単純に増やす。金型冷却回路を分岐して冷却水流量を増やすことで金型冷却能力を高めます。
・チラーへの変更。チラーの冷却能力を増やす。
 冷却水温度や水圧が一定ではない時、チラーを使用することで冷却能力を安定させることが出来います。
 チラーの冷媒温度が不安定な時、冷却能力が不足しているため冷却能力の高いチラーと変更します。

金型の修理・改造
 PL面は成形した樹脂を挟むだけでも徐々に凹み等の変形が起きることで擦り合わせが悪くなります。変形した金型は、修理が必要となります。
 また、単に修理するだけでなく再発等があれば、樹脂種類や製品形状を鑑みて、定期的に擦り合わせを調整するなどの定期メンテナンスを組み込む検討が必要となります。


割型など可動部のバリカス発生の主な対策

 割型やその他スライド部など頻繁に稼働する箇所は、当初擦り合わせに問題がなくても、連続稼働することで擦り合わせの問題おこり、バリによる樹脂カスが発生します。
 連続成形による擦り合わせ問題としては、金型の熱膨張によるもの。潤滑油の性能低下によるもの。金属齧りによるものなどがあります。

割型可動部のグリスアップ
・割型可動部をグリスアップする
 割型のスライド部は、露出していないため金型表面から状態を確認することが出来ません。このため、定期的に割型を分解・清掃してグリスアップをし直すことで擦り合わせ悪化によるバリを予防します。
・割型部の冷却する
 割型部は構造が独立しているため冷却回路を持たないため高温となるものがあります。中間タイマーを長くする。エアーブローを使用する。取り付けられた金型を低温にすることで間接冷却をするなどして熱膨張を抑制します。

金型の修理・改造
 グリス切れ等で金属齧りによりバリが発生するようになった金型については修理が必要となります。
 割型部に冷却回路がなく、熱膨張によるバリが発生する時には割型部に冷却回路を組み込む改造を検討することも必要です。


スプルからの樹脂カスの主な対策

・取出機の動作を擦らないようにする。
 スプル・ランナーの掴む位置、後退位置を調整し、可能な範囲で擦らないよう設定見直します。
・型開き幅を広くする。
 取出機の設定で解消できない時、金型の制限ボルト、リンクの長さを変更することでスプル・ランナー部の開口を広くすることで取出時の擦れによる樹脂カスを防ぎます。
金型の修理・改造
 ランナーバリによるものやロックピンから樹脂カスが発生する場合には修理が必要となります。


粉砕片などの飛散カスの主な対策

 粉砕機の向きを変更し、飛散する方向を変える。間に衝立等の配置する。コンベアやランナーシューター(滑り台)を利用して粉砕機と成型機の金型部から遠ざけます。
 なお、ランナーシューターは滑り台方式でランナーを移動させるため高低差が必要となります。コンベアは高低差を必要としない一方で、長期に使用するとコンベアからの異物発生などメンテナンスをシューター以上に必要とします


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