射出成形オペレーターの知識蔵＞パージの悩み＞パージ目的と方法

　射出成形におけるパージ作業では、単に滞留したことにより熱劣化した樹脂の入替から、異なる原料（色替え・材料替え）への入替。加熱筒内部に貼り付き炭化したヤケゴミの洗浄などを行います。
　パージ作業の目的により、パージ材の使用有無など手順に違いがあります。

パージ作業の目的

・熱劣化した材料の置換

　成形機停止後の再稼働では、一度冷えて再加熱された樹脂が長時間加熱筒で滞留するため内部の変質しています。パージ作業により短時間で加熱筒内部を新しい樹脂と置換することが出来ます。
　連続成形過程のチョコ停であっても、樹脂の種類によっては加熱筒内部の滞留時間が数十秒長くなるだけでも変色などの変質することがあります。このような場合でも製品への影響を防ぐため、パージ作業により短時間で加熱筒内部を新しい樹脂と置換します。

・色替え、品種替え材料の置換

　同一材料での色替えや材料替えでは、古い材料が加熱筒内部に残らないよう綺麗に除去した置換が必要となります。
　加熱筒内部では加熱筒の内壁やスクリュー、ノズル等に前材料の色見や樹脂が融着し残ることで材料や色味が混入し品質低下を招くため、パージ作業により溶着した色味や樹脂を除去した置換を行います。

・加熱等内部の洗浄

　加熱筒の内壁やスクリュー、ノズル等には高温により炭化した樹脂が張り付くことで、製品にヤケゴミの混入（溶着）が発生します。
　炭化して張り付いた樹脂は、洗浄力の強いパージ剤の使用や温度差や圧力（背圧）、射出速度などで負荷をかけるパージ作業により、加熱筒内部を洗浄します。

代表的なパージ作業の方法

　パージでは射出成形機の自動パージ機能を用いる方法と、手動操作によりパージを行う方法があります。材料ロスや作業労力を減らためには、パージ目的に沿って自動パージと手動パージを適時使い分けると効果的です。

高背圧、高回転による材料入替のためパージ（背圧パージ）

　成形機の計量（チャージ）設定の背圧を高く、計量速度を早く設定して加熱筒内部の樹脂を高速で入れ替えを行います。
　背圧を高くすることで射出工程がなしでノズルから樹脂を排出するため、加熱筒内部での変質速度が速い樹脂の入替に適しています。
　チェックノズルがある成形機では、ノズルをオープンにする必要があります。

・使用例

　チョコ停後の材料入替に適しています。
　加熱筒内部へのヤケゴミ融着が少ない材料では、成形機停止後の再稼働での入替に用いることも出来ます。

低から中背圧と射出工程を入れたパージ

　成形機の計量（チェージ）と射出工程を繰り返し行うことで加熱筒内部の樹脂の入れ替えを行います。
　計量が出来る範囲内で背圧を高くすることで、計量時の巻き込みと射出工程により加熱筒内部に融着した樹脂を剥がす効果により洗浄効果が期待できます。
　チェックノズルがある成形機では、背圧をより高背圧にすることで洗浄効果を高めることが出来ます。

・使用例

　通常の色替えや材料替えを目的としたパージに適しています。
　加熱筒内部へのヤケゴミ融着が発生する材料での成形機停止後の再稼働に用います。

空射出を取り入れたパージ

　成形機の計量（チェージ）と射出工程。スクリュー回転無しでの計量と射出工程（空射出）を繰り返し行うパージ作業です。
　スクリュー回転無しでの計量と射出工程（空射出）は、樹脂の代わりに高温の空気を計量し、高速で射出することで先端部に加熱筒の設定温度＋圧縮熱の温度が加わったエアーを射出します。高温とエアー圧により、加熱筒内部に融着したヤケゴミを剥がし、樹脂によるパージで排出します。

・使用例

　高温から低温へと変わった際の色替えや材料替えを目的としたパージでパージ温度が不足する場合に用います。
　連続成形においてヤケゴミが発生した際に加熱筒への簡易洗浄として用います。

パージ剤を使用したパージ

　パージ作業において専用のパージ剤を使用しての作業です。パージ剤は製品より使用できる材料種類や使用方法が異なります。
　使用するパージ剤の使用方法と適合する材料種類を確認して使用します。
　適切に使用することで加熱筒内部に対して強力な洗浄効果があります。洗浄効果はスクリューの分解清掃と比較すると劣るため、分解清掃の頻度を減らす簡略的な洗浄の位置付けであり、洗浄効果に過度の過信をすることは出来ません。

・使用例

　加熱筒やスクリューに内部にヤケゴミや色が残る際の洗浄。パージによる材料置換時の材料を節約する際のパージ作業。

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